妄想/連想/暴走――激走する脳内モルヒネの意想。 変態ハードボイルド小説作家の有相無相――
酒井しのぶの作品紹介
【ファッキン・シスターズ・クライスト】
酒好きで女好きで自堕落で格好つけの片桐有二は、二十五年まえに体験したレイプ事件のトラウマに悩まされる、ハードボイルドを気取った私立探偵。ある依頼がもとで、変態性癖が巻き起こす事件に首を突っ込むことになってしまう。高飛車で自分勝手なふしだら女の酒井しのぶと共に、事件の真相を探りだすのだが……推理あり、シリアスありの、本格ハードボイルド長編小説。
【あいつとの電話】
ツンデレコンビのしのぶと有二。小説のなかだけじゃなく、普段の会話も超ツンデレ&超下品でちょっぴりエッチ!
酒井しのぶの小説に登場する二人が織り成す、会話のみの超ショートショート作品集です。一話読みきりなので、お気軽に読んでいただければと思います。
【Shinobu to Yuji 短編集】
長編ファッキン・シスターズ・クライストの外伝的一話読みきり短編作品集。笑い、切ない過去、素直じゃない愛情、そしてお決まりのエッチな会話。しのぶと有二のツンデレコンビは、殺人事件がなくても面白い。
(注: すべての作品がR15指定です。作品の性格上、性描写、暴力描写、差別的発言などが各所に出てきます。不快に思う人は読まないでください)
酒好きで女好きで自堕落で格好つけの片桐有二は、二十五年まえに体験したレイプ事件のトラウマに悩まされる、ハードボイルドを気取った私立探偵。ある依頼がもとで、変態性癖が巻き起こす事件に首を突っ込むことになってしまう。高飛車で自分勝手なふしだら女の酒井しのぶと共に、事件の真相を探りだすのだが……推理あり、シリアスありの、本格ハードボイルド長編小説。
【あいつとの電話】
ツンデレコンビのしのぶと有二。小説のなかだけじゃなく、普段の会話も超ツンデレ&超下品でちょっぴりエッチ!
酒井しのぶの小説に登場する二人が織り成す、会話のみの超ショートショート作品集です。一話読みきりなので、お気軽に読んでいただければと思います。
【Shinobu to Yuji 短編集】
長編ファッキン・シスターズ・クライストの外伝的一話読みきり短編作品集。笑い、切ない過去、素直じゃない愛情、そしてお決まりのエッチな会話。しのぶと有二のツンデレコンビは、殺人事件がなくても面白い。
(注: すべての作品がR15指定です。作品の性格上、性描写、暴力描写、差別的発言などが各所に出てきます。不快に思う人は読まないでください)
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【ボチボチと書き始めています】
いろいろあり、忙しい毎日を過ごしています。
書きたい衝動は日に日に増してくるのですが、なかなか時間が作れず、昔のようにすべてを犠牲にして書く勇気もなく、いまは我慢の時期かなと思う今日この頃。
それでも、書かずにはいられないときもあるので、短いエピソード的なものをチマチマと書いたりしています。
皆様のところへ訪問する時間はまだなかなか作れませんが、毎日少しづつですが、勉強し精進しているところですので、いましばらくお待ちくださいませ。
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こんにちは、酒井しのぶでございます。
昨日、途中で記事を終了しましたので、今日はその続きになります。昨日の記事をまだ読んでいない人は読みましょうね。(読みたくないですって!? 泣)
ミステリーについての考察……というかダラダラ書き?
さて、読みましたか? そうですか、読んでいただいてから言うのもなんですが、今日の記事は昨日の記事とはあまり関連がないかもしれません、すいません。(殴)
今日のお話は、タイトルどおり「ミステリー小説におけるハードボイルドの位置取り」についてあれこれと思案を巡らすという、いつもどおり思いついたことをただただ書いていくだけの、ダラダラ書き記事です。(おまえそれでも作家か! って怒らないでね)
わたくしが見つけた(正確にはいろいろな文献や教科書を読んで知った)ハードボイルドの特徴というのは、これまたいろいろな文献で知ったミステリーの特長と、合致している部分もあれば、相反している部分もあるってところです。
まず、合致点。
あたりまえですが、ミステリーですから〝謎〟があり、それを〝解く〟という点は合致していますね。
多くの場合〝犯罪を取り扱う〟という点も合致します。
そしてまた、多くの場合〝探偵〟が主人公だという点でも合致です。(この記事で言う探偵とは、警察や一般人も含め、事件の謎を解くために活躍しようとする人物のことと定義します。職業としての探偵は、この記事では私立探偵と呼ぶことにします)
ほかにもいろいろと、定石的な部分で検討すればいっぱいあるのでしょうが、まぁ合致点に関しては、今日の話の中核ではないので、このくらいでいいでしょう。
さて、それでは非合致点。
これはけっこう面白いです。(理屈好きにはたまらない妙があります)
そもそもミステリー小説、推理小説と呼ばれるものの王道の書き方と言えば、〝三人称〟であり、それに付け加えて、一九二○年あたりから主流となってきたのが、シャーロック・ホームズにおけるワトソン的存在です。
王道を行く推理小説では、このワトソン的存在を語り手にすることで、ストーリーを展開していく手法が主流になりました。三人称とはいえ、ワトソン視点を重きに置いた書きかたをすることで、いろいろなことが得られます。
ワトソンは、作者にとってはとてつもなく便利な存在なのです。
理由その一: 読者よりおバカに仕立てることで、読者のインテリジェンスを刺激する。
理由その二: おバカだから、読者に必要以上の情報を与えない。
理由その三: ワトソンがホームズを褒めることで、簡単にヒーロー像を描ける。
ほかにもいろいろありますが、大きなところではこのくらいでしょうか。
その一については、それほど説明はいらないでしょう。読者に優等感を持たせつつ、でも実際に謎を解いているのはホームズなので、読者じゃ気づけない謎を最後に提示できる、これがその一の重要点です。
その二はおそらく、とてつもなく重要で、尚且つとっても便利です。その一でも触れたとおり、ワトソンは読者よりちょびっとおバカなんです。だから、ホームズの事件に対する考えをすべて知ることができません。これにより、読者に与える情報を制限できます。さらには、おバカゆえに間違った情報を読者に提示することもできてます。名探偵コナンで、毛利小五郎や、メグレ警部が、勘違い推理をひけらかすのと同じ手法ですね。(小説の場合、このワトソンが語り手になったりしますから、より間違いに気づきづらくなります)
その一との合わせ技で、ワトソンの話を聞きながら読者に優等感を与え、最後の最後でホームズが謎を解き、アッと言わせることができてしまうんですね。
その三もエンターテイメント視点で見れば、とてつもなく重要です。やはり主人公は格好よくなくてはいけません。一般的な地の文を使った三人称の書き方をした場合には、必要以上に主人公をもてはやすことができません。地の文はあくまでも客観的な視点でなければならないからです。ですが、ワトソン視点の三人称を用いれば、話は別です。ワトソンはホームズに大きな期待と、憧れと、尊敬と、その他もろもろの賛辞に満ちた感情を持ち合わせているわけですから、いついかなる時でもホームズを褒めちぎれます。これにより、ホームズはヒーローになり、読者にも憧れを抱かせることができ、人気がうなぎのぼりになるってわけです。
さて、こんなステキなワトソン視点の書きかたが主流になっていたにも関わらず、そのルールをぶっ壊してミステリーを書き、大人気になった作家がおります。
ずばり、〝ダシール・ハメット〟です。そう、「マルタの鷹」ですよ。
「マルタの鷹」は、三人称一視点という手法で書かれていますが、その〝一視点〟というのは、ワトソン的スーパー・サブではありません。主人公である、サム・スペードです。(いやーん、もう! 名前だけでも感じちゃう格好よさですよ! 惚)
ダシール・ハメットはその他の作品でも、三人称主人公視点か、一人称一視点で作品を書いています。
そうです、この〝主人公一視点〟というスタイルこそが、ハードボイルドにとっての命綱なのです。(一人称であっても三人称であっても、視点が一つというところが重要)
それまでのワトソン手法というのは、語り手に主人公を語らせることによる〝分業制〟によって、世界を作りだしていました。
しかしハメットは、語り手もヒーロー像の演出も、すべて主人公に委ねる〝おれこそベンチャー!〟的手法を打ちたてたのです。
これは、ミステリー小説が長い年月のなかで試行錯誤を繰り返しながら発展し、ようやく手に入れたワトソン手法に、逆行するする手法です。
しかしながら、これによりミステリー小説には二大勢力ができるわけです。つまりは、〝謎解き派〟と言われる本格推理ミステリー小説と、わたくしが大好きな〝ハードボイルド派〟と言われる(かは知りませんが……)私立探偵小説です。
この二つの勢力は、根本的な対立があります。(実際に対立していたわけではありませんよ)
それは〝かね持ちと貧乏の争い〟です。
まえにも書いたことがありますが、本格推理小説は、貴族層が舞台であり、ホームズにしてもポワロにしても、おかね持ちです。
一方、私立探偵小説の舞台は、中流階級以下の町、特に多いのはスラム街などで、主人公も特別なおかね持ちではありません。そして、私立探偵小説では、犯人や、犯人でなくても重要なポジションでふんぞり返っている悪人は、みんなおかね持ちだったりします。
この図式により私立探偵小説が、一般層へ親近感を与えたのは言うまでもありませんね。
さぁでは、なぜ私立探偵小説は、それまでの推理小説が歩んできた道をわざわざ逆走して、推理小説が築きあげた〝分業制〟スタイルを破棄してまで、一視点スタイルにこだわったのでしょうか。
ここでようやく、昨日の続きになりました。(長かった……)
ハードボイルドは〝謎解き中心の話にするために、人間のリアルな描写を犠牲にしちゃだめよ〟って立場をとったからなんですね。
人間の内面をリアルに描写するためには、地の文視点の三人称では難しさがあります。客観性こそが地の文の命ですからね。
そして〝分業制〟によるワトソン視点でも、やはり無理があります。いくらワトソンとホームズが親友だったとしても、ホームズの内なる部分を読者にさらけ出すことはできないからです。
これまでの本格推理小説というのは、あえて主人公の内面を見せないためにもワトソン視点を使っていたのです。内面を見せないことにより、神格化されたヒーローを演出していたわけで、人間臭さを描かないことで、謎解きに読者を集中させることができるだけでなく、作者も余計なことを書かなくて良いという、ご都合主義が生んだ手法こそが、ワトソン視点の〝分業制〟なわけで、推理小説とは、パズルゲームなのだという路線をひた走ったわけです。
ハードボイルド小説は、それらの築き上げられた技術に逆行することで、まさにハードボイルドらしく、そんな神格化されたヒーローたちに唾を吐いて反抗したってわけです。
描くべきは謎解きじゃない! 人間のくそったれ具合だ!!
と、ダシール・ハメットやレイモンド・チャンドラーが言ったかどうかは知りませんが、たぶんジェイムズ・エルロイ様は言っていると思います。(笑)
ハメットが作り出した一視点手法は、チャンドラーによって発展、進化、そして定石になったわけです。それ以降、ハードボイルド小説はどれもこれも、一人称であれ、三人称であれ、この一視点というスタイルで書かれています。(もちろん新たな試みをする作家はたくさんいますが、この一視点を超える作品がどれだけあるのかは疑問でしょう)
ハードボイルド小説とは、その作者もハードボイルド精神を持っているってことでしょうか。そうですね、持っていなければ書けませんものね。
ハードボイルドはミステリーというジャンルに属していながらも、ミステリーの持つ定石に喧嘩を売りながら発展してきてる、つまりそれこそが、昨日の記事で書いた〝ミステリーに属しながらも、ミステリーと相反する法則〟の、答えじゃないかと、自問自答してみたわたくしでございます。
自問自答のためにこんな長ったらしい記事を書いてどうもすいません。
あ、そうそう。
面白いサイトを見つけたので、ちょっとご紹介しちゃおうかしら。
レイモンド・チャンドラーの世界
チャンドラーの作品紹介とか、まぁファンサイトみたいなところなのかな。
ページ下段の広告の上のところにある、アイコンの列のなかに、〝ボイル度診断〟って言うのがあります。
これをクリックすると、あなたのハードボイルド具合をチェックしてくれるので、やってみてはいかがでしょか。
ちなみにわたくしの診断結果は以下のとおりでした。
よくわかりませんが、マーロウ・タイプだったのでオッケーです。(笑)
それでは本日の「しのぶが思うハードボイルド」
ライターの火力はいつも最大!
以上です。
それではまた、酒井しのぶでございました。
昨日、途中で記事を終了しましたので、今日はその続きになります。昨日の記事をまだ読んでいない人は読みましょうね。(読みたくないですって!? 泣)
ミステリーについての考察……というかダラダラ書き?
さて、読みましたか? そうですか、読んでいただいてから言うのもなんですが、今日の記事は昨日の記事とはあまり関連がないかもしれません、すいません。(殴)
今日のお話は、タイトルどおり「ミステリー小説におけるハードボイルドの位置取り」についてあれこれと思案を巡らすという、いつもどおり思いついたことをただただ書いていくだけの、ダラダラ書き記事です。(おまえそれでも作家か! って怒らないでね)
わたくしが見つけた(正確にはいろいろな文献や教科書を読んで知った)ハードボイルドの特徴というのは、これまたいろいろな文献で知ったミステリーの特長と、合致している部分もあれば、相反している部分もあるってところです。
まず、合致点。
あたりまえですが、ミステリーですから〝謎〟があり、それを〝解く〟という点は合致していますね。
多くの場合〝犯罪を取り扱う〟という点も合致します。
そしてまた、多くの場合〝探偵〟が主人公だという点でも合致です。(この記事で言う探偵とは、警察や一般人も含め、事件の謎を解くために活躍しようとする人物のことと定義します。職業としての探偵は、この記事では私立探偵と呼ぶことにします)
ほかにもいろいろと、定石的な部分で検討すればいっぱいあるのでしょうが、まぁ合致点に関しては、今日の話の中核ではないので、このくらいでいいでしょう。
さて、それでは非合致点。
これはけっこう面白いです。(理屈好きにはたまらない妙があります)
そもそもミステリー小説、推理小説と呼ばれるものの王道の書き方と言えば、〝三人称〟であり、それに付け加えて、一九二○年あたりから主流となってきたのが、シャーロック・ホームズにおけるワトソン的存在です。
王道を行く推理小説では、このワトソン的存在を語り手にすることで、ストーリーを展開していく手法が主流になりました。三人称とはいえ、ワトソン視点を重きに置いた書きかたをすることで、いろいろなことが得られます。
ワトソンは、作者にとってはとてつもなく便利な存在なのです。
理由その一: 読者よりおバカに仕立てることで、読者のインテリジェンスを刺激する。
理由その二: おバカだから、読者に必要以上の情報を与えない。
理由その三: ワトソンがホームズを褒めることで、簡単にヒーロー像を描ける。
ほかにもいろいろありますが、大きなところではこのくらいでしょうか。
その一については、それほど説明はいらないでしょう。読者に優等感を持たせつつ、でも実際に謎を解いているのはホームズなので、読者じゃ気づけない謎を最後に提示できる、これがその一の重要点です。
その二はおそらく、とてつもなく重要で、尚且つとっても便利です。その一でも触れたとおり、ワトソンは読者よりちょびっとおバカなんです。だから、ホームズの事件に対する考えをすべて知ることができません。これにより、読者に与える情報を制限できます。さらには、おバカゆえに間違った情報を読者に提示することもできてます。名探偵コナンで、毛利小五郎や、メグレ警部が、勘違い推理をひけらかすのと同じ手法ですね。(小説の場合、このワトソンが語り手になったりしますから、より間違いに気づきづらくなります)
その一との合わせ技で、ワトソンの話を聞きながら読者に優等感を与え、最後の最後でホームズが謎を解き、アッと言わせることができてしまうんですね。
その三もエンターテイメント視点で見れば、とてつもなく重要です。やはり主人公は格好よくなくてはいけません。一般的な地の文を使った三人称の書き方をした場合には、必要以上に主人公をもてはやすことができません。地の文はあくまでも客観的な視点でなければならないからです。ですが、ワトソン視点の三人称を用いれば、話は別です。ワトソンはホームズに大きな期待と、憧れと、尊敬と、その他もろもろの賛辞に満ちた感情を持ち合わせているわけですから、いついかなる時でもホームズを褒めちぎれます。これにより、ホームズはヒーローになり、読者にも憧れを抱かせることができ、人気がうなぎのぼりになるってわけです。
さて、こんなステキなワトソン視点の書きかたが主流になっていたにも関わらず、そのルールをぶっ壊してミステリーを書き、大人気になった作家がおります。
ずばり、〝ダシール・ハメット〟です。そう、「マルタの鷹」ですよ。
「マルタの鷹」は、三人称一視点という手法で書かれていますが、その〝一視点〟というのは、ワトソン的スーパー・サブではありません。主人公である、サム・スペードです。(いやーん、もう! 名前だけでも感じちゃう格好よさですよ! 惚)
ダシール・ハメットはその他の作品でも、三人称主人公視点か、一人称一視点で作品を書いています。
そうです、この〝主人公一視点〟というスタイルこそが、ハードボイルドにとっての命綱なのです。(一人称であっても三人称であっても、視点が一つというところが重要)
それまでのワトソン手法というのは、語り手に主人公を語らせることによる〝分業制〟によって、世界を作りだしていました。
しかしハメットは、語り手もヒーロー像の演出も、すべて主人公に委ねる〝おれこそベンチャー!〟的手法を打ちたてたのです。
これは、ミステリー小説が長い年月のなかで試行錯誤を繰り返しながら発展し、ようやく手に入れたワトソン手法に、逆行するする手法です。
しかしながら、これによりミステリー小説には二大勢力ができるわけです。つまりは、〝謎解き派〟と言われる本格推理ミステリー小説と、わたくしが大好きな〝ハードボイルド派〟と言われる(かは知りませんが……)私立探偵小説です。
この二つの勢力は、根本的な対立があります。(実際に対立していたわけではありませんよ)
それは〝かね持ちと貧乏の争い〟です。
まえにも書いたことがありますが、本格推理小説は、貴族層が舞台であり、ホームズにしてもポワロにしても、おかね持ちです。
一方、私立探偵小説の舞台は、中流階級以下の町、特に多いのはスラム街などで、主人公も特別なおかね持ちではありません。そして、私立探偵小説では、犯人や、犯人でなくても重要なポジションでふんぞり返っている悪人は、みんなおかね持ちだったりします。
この図式により私立探偵小説が、一般層へ親近感を与えたのは言うまでもありませんね。
さぁでは、なぜ私立探偵小説は、それまでの推理小説が歩んできた道をわざわざ逆走して、推理小説が築きあげた〝分業制〟スタイルを破棄してまで、一視点スタイルにこだわったのでしょうか。
ここでようやく、昨日の続きになりました。(長かった……)
ハードボイルドは〝謎解き中心の話にするために、人間のリアルな描写を犠牲にしちゃだめよ〟って立場をとったからなんですね。
人間の内面をリアルに描写するためには、地の文視点の三人称では難しさがあります。客観性こそが地の文の命ですからね。
そして〝分業制〟によるワトソン視点でも、やはり無理があります。いくらワトソンとホームズが親友だったとしても、ホームズの内なる部分を読者にさらけ出すことはできないからです。
これまでの本格推理小説というのは、あえて主人公の内面を見せないためにもワトソン視点を使っていたのです。内面を見せないことにより、神格化されたヒーローを演出していたわけで、人間臭さを描かないことで、謎解きに読者を集中させることができるだけでなく、作者も余計なことを書かなくて良いという、ご都合主義が生んだ手法こそが、ワトソン視点の〝分業制〟なわけで、推理小説とは、パズルゲームなのだという路線をひた走ったわけです。
ハードボイルド小説は、それらの築き上げられた技術に逆行することで、まさにハードボイルドらしく、そんな神格化されたヒーローたちに唾を吐いて反抗したってわけです。
描くべきは謎解きじゃない! 人間のくそったれ具合だ!!
と、ダシール・ハメットやレイモンド・チャンドラーが言ったかどうかは知りませんが、たぶんジェイムズ・エルロイ様は言っていると思います。(笑)
ハメットが作り出した一視点手法は、チャンドラーによって発展、進化、そして定石になったわけです。それ以降、ハードボイルド小説はどれもこれも、一人称であれ、三人称であれ、この一視点というスタイルで書かれています。(もちろん新たな試みをする作家はたくさんいますが、この一視点を超える作品がどれだけあるのかは疑問でしょう)
ハードボイルド小説とは、その作者もハードボイルド精神を持っているってことでしょうか。そうですね、持っていなければ書けませんものね。
ハードボイルドはミステリーというジャンルに属していながらも、ミステリーの持つ定石に喧嘩を売りながら発展してきてる、つまりそれこそが、昨日の記事で書いた〝ミステリーに属しながらも、ミステリーと相反する法則〟の、答えじゃないかと、自問自答してみたわたくしでございます。
自問自答のためにこんな長ったらしい記事を書いてどうもすいません。
あ、そうそう。
面白いサイトを見つけたので、ちょっとご紹介しちゃおうかしら。
レイモンド・チャンドラーの世界
チャンドラーの作品紹介とか、まぁファンサイトみたいなところなのかな。
ページ下段の広告の上のところにある、アイコンの列のなかに、〝ボイル度診断〟って言うのがあります。
これをクリックすると、あなたのハードボイルド具合をチェックしてくれるので、やってみてはいかがでしょか。
ちなみにわたくしの診断結果は以下のとおりでした。
診 断 書
2010年 1月 12日 (火) 17時 02分 現在
あなたのハードボイル度は 63% です。
フィリップ・マーロウ タイプ
貴方は少々度の過ぎたハードボイルド者。
自分を厳しく律する一方、
他人のミスを許す事が出来ないため、
敵を多く作ってしまうタイプです。
一見クールで感情を表に出さない貴方は
実は虚勢の鎧で身を固めた
寂しがり屋で傷つき易い感傷家。
また、自尊心が強く、人間関係においては
常に優位に立っていないと安心できない
という神経質な一面も持っており、
ときに執拗な攻撃性を発揮してしまいます。
典型的な「商売に向かないタイプ」といえるでしょう。
よくわかりませんが、マーロウ・タイプだったのでオッケーです。(笑)
それでは本日の「しのぶが思うハードボイルド」
ライターの火力はいつも最大!
以上です。
それではまた、酒井しのぶでございました。
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Comment
Re:ミステリー小説のなかでのハードボイルドの位置取りを考察
こんばんわ
小説の世界って奥が深いですねー
ミステリー小説は特に
学生時代にミステリー小説を何冊か読んだことがあるのですが、
最後まで読んでも、よく謎解きの意味がわかんないこともありあました(笑)
しのぶサンのブログを読んでいたら、また小説を読んでみたくなりますねー
小説の世界って奥が深いですねー
ミステリー小説は特に
学生時代にミステリー小説を何冊か読んだことがあるのですが、
最後まで読んでも、よく謎解きの意味がわかんないこともありあました(笑)
しのぶサンのブログを読んでいたら、また小説を読んでみたくなりますねー
OLとまとさんへ
こんばんは。コメントどうもありがとうございます。
ミステリーは、作り方(書き方)にスタイルというか、定石のようなものがあるので、コツさえつかんでしまえば、それほど難しくないんじゃないかと、自分に言い聞かせて書いています。(笑)
どんなジャンルでも、一芸を極める、個性を魅せる、といったことはとても大変なことですから、日々精進です。
OLとまとさんのコメントも、わたくしのやる気を倍増してくれる活力になっています。
本当に感謝しております。
小説、面白いです。最近は、通勤電車で本を読んでいる人もめっきり減りました。たまには、液晶画面じゃなく、活字もいいかもしれませんね。(と、自分に言い聞かせてみる。( *´艸`)
ミステリーは、作り方(書き方)にスタイルというか、定石のようなものがあるので、コツさえつかんでしまえば、それほど難しくないんじゃないかと、自分に言い聞かせて書いています。(笑)
どんなジャンルでも、一芸を極める、個性を魅せる、といったことはとても大変なことですから、日々精進です。
OLとまとさんのコメントも、わたくしのやる気を倍増してくれる活力になっています。
本当に感謝しております。
小説、面白いです。最近は、通勤電車で本を読んでいる人もめっきり減りました。たまには、液晶画面じゃなく、活字もいいかもしれませんね。(と、自分に言い聞かせてみる。( *´艸`)
Re:ミステリー小説のなかでのハードボイルドの位置取りを考察
こんばんわ。
さすがよく分析してありますね。
感心します。
ワトソンの役割はまさにその通りでしょうね。
最初考えたのはやはりすごいですね。
勉強になりました。
さすがよく分析してありますね。
感心します。
ワトソンの役割はまさにその通りでしょうね。
最初考えたのはやはりすごいですね。
勉強になりました。
KOZOUさんへ
ワトソンを最初に使ったコナン・ドイルはやはり偉大ですよね。
とっても考え抜かれていて、最善の手法だと思います。
それをあえて利用しなかったハメットは、ハードボイルドのなんたるかを悟っていたとしか思えません。チャンドラーがハードボイルドを継承した時点で、すでに私立探偵小説の手法はほとんど完成していましたからね。
マルタの鷹が世界にもたらした衝撃は相当なものだったでしょう。
いつも丁寧なコメントをありがとうございます。
とっても考え抜かれていて、最善の手法だと思います。
それをあえて利用しなかったハメットは、ハードボイルドのなんたるかを悟っていたとしか思えません。チャンドラーがハードボイルドを継承した時点で、すでに私立探偵小説の手法はほとんど完成していましたからね。
マルタの鷹が世界にもたらした衝撃は相当なものだったでしょう。
いつも丁寧なコメントをありがとうございます。
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