妄想/連想/暴走――激走する脳内モルヒネの意想。 変態ハードボイルド小説作家の有相無相――
酒井しのぶの作品紹介
【ファッキン・シスターズ・クライスト】
酒好きで女好きで自堕落で格好つけの片桐有二は、二十五年まえに体験したレイプ事件のトラウマに悩まされる、ハードボイルドを気取った私立探偵。ある依頼がもとで、変態性癖が巻き起こす事件に首を突っ込むことになってしまう。高飛車で自分勝手なふしだら女の酒井しのぶと共に、事件の真相を探りだすのだが……推理あり、シリアスありの、本格ハードボイルド長編小説。
【あいつとの電話】
ツンデレコンビのしのぶと有二。小説のなかだけじゃなく、普段の会話も超ツンデレ&超下品でちょっぴりエッチ!
酒井しのぶの小説に登場する二人が織り成す、会話のみの超ショートショート作品集です。一話読みきりなので、お気軽に読んでいただければと思います。
【Shinobu to Yuji 短編集】
長編ファッキン・シスターズ・クライストの外伝的一話読みきり短編作品集。笑い、切ない過去、素直じゃない愛情、そしてお決まりのエッチな会話。しのぶと有二のツンデレコンビは、殺人事件がなくても面白い。
(注: すべての作品がR15指定です。作品の性格上、性描写、暴力描写、差別的発言などが各所に出てきます。不快に思う人は読まないでください)
酒好きで女好きで自堕落で格好つけの片桐有二は、二十五年まえに体験したレイプ事件のトラウマに悩まされる、ハードボイルドを気取った私立探偵。ある依頼がもとで、変態性癖が巻き起こす事件に首を突っ込むことになってしまう。高飛車で自分勝手なふしだら女の酒井しのぶと共に、事件の真相を探りだすのだが……推理あり、シリアスありの、本格ハードボイルド長編小説。
【あいつとの電話】
ツンデレコンビのしのぶと有二。小説のなかだけじゃなく、普段の会話も超ツンデレ&超下品でちょっぴりエッチ!
酒井しのぶの小説に登場する二人が織り成す、会話のみの超ショートショート作品集です。一話読みきりなので、お気軽に読んでいただければと思います。
【Shinobu to Yuji 短編集】
長編ファッキン・シスターズ・クライストの外伝的一話読みきり短編作品集。笑い、切ない過去、素直じゃない愛情、そしてお決まりのエッチな会話。しのぶと有二のツンデレコンビは、殺人事件がなくても面白い。
(注: すべての作品がR15指定です。作品の性格上、性描写、暴力描写、差別的発言などが各所に出てきます。不快に思う人は読まないでください)
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【ボチボチと書き始めています】
いろいろあり、忙しい毎日を過ごしています。
書きたい衝動は日に日に増してくるのですが、なかなか時間が作れず、昔のようにすべてを犠牲にして書く勇気もなく、いまは我慢の時期かなと思う今日この頃。
それでも、書かずにはいられないときもあるので、短いエピソード的なものをチマチマと書いたりしています。
皆様のところへ訪問する時間はまだなかなか作れませんが、毎日少しづつですが、勉強し精進しているところですので、いましばらくお待ちくださいませ。
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こんばんは、酒井しのぶでございます。
これといって意味もないんですが、たまには小説ブログらしく、自分の作品を載せてみようかしらと思いましてね。
普段は小説家になろうというサイト様のスペースをお借りして、そこで自作小説を発表させていただいています。
わたくしの作品は、「小説家になろう」酒井しのぶのマイページですべて閲覧できますので、興味がある人はぜひ覗いてみてくださいませね。
ですがやはり、「こいつって、普段からわけのわからないブログばっか書いてやがるし、どうせ小説もくだらなくってつまらないに決まってるぜ」って思って、アクセスしてくれない人もたくさんいることでしょう。(まぁ、だいたいあってますから、文句の言いようがありません。笑)
そこで「小説家になろう」酒井しのぶのマイページに投稿してある作品から、短編を一つここに掲載してみようと思います。
本当は、普段書いている色調の作品が、参考にするには良いのでしょうが、あえてちょっとだけ違う色調のものを載せてみます。
ブログという枠で発表するには、長い作品だと思いますが、わたくしの作品にしては短い部類なので、お許しくださいませ。
今回の作品は、長編ファッキン・シスターズ・クライストの外伝的な作品で、ヒロイン酒井しのぶ(わたくしとは別キャラです)の子供の頃の回送録です。
それでは、前置きが長くなりましたが、どうぞお読みくださいませ。(注: 若干ですが性的な描写があります。ご注意を)
【とびっきりの笑顔はあなただけに】(09年12月6日「小説家になろう」掲載作品)
あたしは子供のころ、とても体が弱かった――
どうして体が弱かったのかは覚えていない。パパは家を出ていってしまったし、ママとはもう十五年も会っていないから、いまとなっては教えてくれる人もいない。
毎日、朝昼晩と苦い薬を飲んでいた。錠剤を上手く飲み込めない子供で、カプセルの薬を割って、中身の粉を飲まなければならなかった。とっても苦くて、いつも泣いていた。
あたしには妹がいる。一つ年下で、あたしと違って真面目だし、あたしと違って子供のころからこれといった病気もしない元気な妹だった。健康で、友達もたくさんいて、いつも外で遊んでいた妹は、日に焼けた浅黒い肌をしていた。
いまとなっては、この歳になっても真っ白な透き通る肌でいられるわけだから、少しは病気に感謝しなくちゃと思ったりもするけど、当時は妹の浅黒い肌がとってもうらやましかった。
あたしはいつも、家のまえで男の子たちと遊んでいる妹の声を聞きながら、子供部屋の自分の机に座って本を読んでいた。
大好きだった本は、小公女と若草物語だった。子供向けに大きな字でわかりやすく書かれたハードカバーの本が、あたしの机にはたくさんあった。
ママもパパもあたしにはいつも、たくさん本を買ってくれていた。特にパパは、出張が多い仕事をしていたから、おみやげはいつも本だった。妹へのお土産よりもずっと素敵だったし、ときには選ぶのに迷ったからと、何冊も買ってきてくれたりしていた。だけど――あたしはいつも、妹がうらやましくって仕方がなかった――
外で遊びたかった――男の子たちとどろんこになって遊んでみたかった。
ある日、パパは連休を利用して親戚のおじさんの家に泊まりに行った。
あたしは泣いた――
パパが大好きだったから――大好きなパパが、あたしじゃなく妹を連れていったことに泣いた。仕方ないのはわかっていたけど。あたしは病気がちで、外泊なんて無理だってわかっていたけど――悲しかった。
あたしは、ママと二人で留守番だった。ママはいつもどおりに、つまり――パパがいないときのいつものどおりに――あたしの知らない男を家に連れてきていた。いつもどおりに、あたしにその男が帰るまで部屋から出てくるなと言って、寝室に入っていった。それでまた、あたしは泣いた。
ママがなにをしているのかは、わからなかった。まだそんなことを知る歳じゃなかった。でも、あたしは子供部屋に閉じ込められてる気分だったし、ママがあたしの大好きなパパを裏切っているんだということくらいはわかっていたから――だから泣いた。
三日間――知らない男は、パパがいない三日間、毎日来て毎日ママと寝室に入っていった。
四日目にパパと妹が帰ってきた。パパを出迎えに玄関まで走っていったあたしが見たのは、パパに文句を言って怒っている妹の姿だった。
理由は単純だった――帰り道の途中、お昼ご飯をレストランで食べようと約束していたのに、妹が車のなかで寝てしまったから、パパはそのまままっすぐ家に帰ってきてしまったのだ。家に到着して、寝ているところを起こされた妹は、楽しみにしていたレストランに寄れなくって、カンカンに怒っていた。駄々っ子のそれらしく、パパのお腹をガンガン叩いて、わめき散らしていた。
あたしは妹が憎くて憎くて仕方がなかった――
なんで? なんでそんなことで怒っているの? 幼稚園児じゃあるまいし、寝いていたあんたが悪いんじゃないの! あたしはずっと家にいて、部屋に閉じ込められていて、パパを裏切っているママを見ていて――あんたは、あたしの大好きなパパを独り占めにできただけでも、神様に感謝するべきなのに――なんで? なんでそんなどうでもいいことで――あたしのパパに怒っているの! なんでよ!!
あたしは、そんなことを口に出すことはできず、ただただ泣いた。パパがあたしを見て、微笑んでくれた。
〝しのぶ、おいで。おみやげだよ〟って言って、白とピンクの大きな包みを見せてくれた。
パパは妹をママに預けて、あたしを抱きしめてくれた。泣いているあたしの耳もとで〝しのぶは白が似合うと思ってね。真っ白な洋服を買ってきたよ〟って言った。
〝おまえはいつまでもずっと、真っ白なままでいるんだよ〟そう言って、あたしの涙を拭いて、抱っこしてリビングに連れていってくれた。
パパが持っていた白とピンクの大きな包みには、真っ白なワンピースが入っていた。本じゃなかった。あたしはパパを抱きしめて、何度もお礼を言った。〝パパ、ありがとう。パパ、大好きだよ〟って、何度も、何度も――
だけど――
その日の晩、あたしはパパとママが抱き合っているのを見てしまった――
パパもママも裸だった。パパはあたしに見せた優しい笑顔なんか微塵も見せずに、荒い息でママの上に覆い被さっていた。ベッドが大きく揺れていて、ママの足は大きく開かれていた。女の子は絶対に誰にも見せちゃいけないって、大事にしなきゃいけないって教えられていた〝アソコ〟にパパの体がくっついて揺れていた。
パパの目はギラギラしていて、とっても怖かった。見たこともない笑みを浮かべて、口もとがだらしなく緩んでいた。聞いたこともない汚い言葉でママをなじっていた。ベッドがいままで以上に、大きく細かく速く揺れて、パパは〝いくぞ〟って叫んで、ママは〝なかはやめてよ〟って叫んで、それでパパはママから離れた――
見てはいけない〝モノ〟を見てしまったってすぐにわかった――パパのお腹の下に恐ろしい〝モノ〟がくっついていた。その恐ろしい〝モノ〟の先から、なにかが飛びだして、ママのお腹にくっついた。
あたしは怖くなって、子供部屋に戻った。二段ベッドの上で寝ている妹に気がつかれないように、静かにゆっくりベッドに入って、毛布をかぶって震えて泣いた。
次の日は気分が悪くて学校を休んだ。苦い薬は飲んだふりをして捨てた。ずっとベッドのなかにいて、パパのお腹の下にくっついていた、恐ろしい〝モノ〟を忘れようと、必死に頭を振っていた。
でもだめだった――
トイレに行ったときに、ママが知らない男を連れて寝室に入っていくのを見てしまった。
寝室のドアを恐る恐る少しだけ開けてしまった――
知らない男のお腹の下に、パパのお腹の下にあったのと同じ〝モノ〟があった。ママがその恐ろしい〝モノ〟を舐めていた。どんなにおいしくて甘いフルーツを食べているときよりも、ずっとおいしそうな顔をしていた。
知らない男は昨日のパパと同じことを言った――〝いくぞ〟って。
パパと同じで、その恐ろしい〝モノ〟の先からなにかが飛びだして、ママの顔にかかった――
すごく怖かった。すごく怖かったのに――ママはとっても嬉しそうな顔をしていた。
それに――すごく怖くて、すごく悲しかったのに――あたしの体の真ん中はゾクゾクして熱くなっていた――
自分がおかしくなってしまったんだと、怖くなって、ベッドにもぐって泣いた。泣いても泣いても、恐ろしい〝モノ〟があたしの頭のなかでググッと動いて、なんだかわからない白い液体を飛ばしていた――
あたしはいつの間にか寝てしまっていて、気がついたら夜中だった。二段ベッドの上で、妹が泣いていた。パパとママが怒鳴りあっているのが聞こえていた――
次の日、子供部屋のドアをノックする音が聞こえて目が覚めた。パパの声が聞こえた。
〝しのぶ、入るよ〟
あたしはベッドから出た。パパが部屋に入ってきた。妹は子供部屋にはいなかった。
パパは、あたしが見た恐ろしいパパじゃなくって、いつもどおりの優しいパパだった。
パパはあたしの肩に手をあてて〝このまえ買ってきたワンピースを着てくれないか〟って言った。
あたしはパパが買ってくれた真っ白なワンピースに着替えた。パパが寝起きでボサボサのあたしの髪をとかしてくれた。大きな手であたしの髪を撫でて言ってくれた。
〝おまえの髪はとっても綺麗だね〟
あたしはパパがいつもどおりのパパだったことで、踊りたくなるほど嬉しかった。真っ白なワンピースの、フリルの裾をふわりとさせるために、その場でクルリとまわってみせた。大好きなパパに、とびっきりの笑顔をみせてから、フリルの裾をちょこんと摘んで、お辞儀した。
パパは持っていた仕事用のバッグから、大きなポラロイドカメラを出した。
〝写真を撮ってもいいかな? お姫様〟
あたしはまた、とびっきりの笑顔で微笑んでみせた。パパはシャッターを二回押した。出てきた二枚の写真のうち、一枚をあたしに渡してくれた。
〝この写真を大事にするんだよ〟
パパはそう言って、あたしの頬にキスをしてくれた。
〝いつか、おまえが大人になって、パパ好みの美しいレディになったら、そのときにまた真っ白な服を買ってあげよう〟
パパはそう言って、あたしをきつく抱きしめてから、立ちあがって子供部屋から出ていった。
あたしはパパのあとを追って玄関までついていった。玄関には大きなスーツケースがあって、パパはそれを持って玄関のドアを開けた。
〝出張なんだ。おみやげを買ってくるから、いい子にしているんだよ〟
パパはそう言って、あたしに手を振って出ていった。
あたしは泣いた――
だって、パパがもう帰ってこないんだってわかってしまったから――
あたしはパパが撮ってくれた写真をいまでも大事に持っている。
色あせて真っ白なワンピースがセピア色になってしまった写真を――
「これが子供のときのおまえか」
「そうよ、なんか文句ある? 素直にかわいいって言いなさいよ」
「ああ、かわいいぜ。いまよりはるかに、とびっきりの美しい笑顔をしているぜ」
「そっか。そういうことなのね」
わかっちゃったわ――
「なにがだ?」
「だからパパは、いつまで経ってもあたしに会いに来ないのね……」
パパ好みの美しいレディになっていないから――
あのときよりも、もっともっと素敵な笑顔ができないから――
「なんだって?」
「なんでもないわよ。仕方ないからあんたで我慢してあげるってことよ。あんたのその、チンケなカシューナッツで我慢するわってことよ」
「意味がわからん。まったくもって、やれやれだな」
これといって意味もないんですが、たまには小説ブログらしく、自分の作品を載せてみようかしらと思いましてね。
普段は小説家になろうというサイト様のスペースをお借りして、そこで自作小説を発表させていただいています。
わたくしの作品は、「小説家になろう」酒井しのぶのマイページですべて閲覧できますので、興味がある人はぜひ覗いてみてくださいませね。
ですがやはり、「こいつって、普段からわけのわからないブログばっか書いてやがるし、どうせ小説もくだらなくってつまらないに決まってるぜ」って思って、アクセスしてくれない人もたくさんいることでしょう。(まぁ、だいたいあってますから、文句の言いようがありません。笑)
そこで「小説家になろう」酒井しのぶのマイページに投稿してある作品から、短編を一つここに掲載してみようと思います。
本当は、普段書いている色調の作品が、参考にするには良いのでしょうが、あえてちょっとだけ違う色調のものを載せてみます。
ブログという枠で発表するには、長い作品だと思いますが、わたくしの作品にしては短い部類なので、お許しくださいませ。
今回の作品は、長編ファッキン・シスターズ・クライストの外伝的な作品で、ヒロイン酒井しのぶ(わたくしとは別キャラです)の子供の頃の回送録です。
それでは、前置きが長くなりましたが、どうぞお読みくださいませ。(注: 若干ですが性的な描写があります。ご注意を)
【とびっきりの笑顔はあなただけに】(09年12月6日「小説家になろう」掲載作品)
あたしは子供のころ、とても体が弱かった――
どうして体が弱かったのかは覚えていない。パパは家を出ていってしまったし、ママとはもう十五年も会っていないから、いまとなっては教えてくれる人もいない。
毎日、朝昼晩と苦い薬を飲んでいた。錠剤を上手く飲み込めない子供で、カプセルの薬を割って、中身の粉を飲まなければならなかった。とっても苦くて、いつも泣いていた。
あたしには妹がいる。一つ年下で、あたしと違って真面目だし、あたしと違って子供のころからこれといった病気もしない元気な妹だった。健康で、友達もたくさんいて、いつも外で遊んでいた妹は、日に焼けた浅黒い肌をしていた。
いまとなっては、この歳になっても真っ白な透き通る肌でいられるわけだから、少しは病気に感謝しなくちゃと思ったりもするけど、当時は妹の浅黒い肌がとってもうらやましかった。
あたしはいつも、家のまえで男の子たちと遊んでいる妹の声を聞きながら、子供部屋の自分の机に座って本を読んでいた。
大好きだった本は、小公女と若草物語だった。子供向けに大きな字でわかりやすく書かれたハードカバーの本が、あたしの机にはたくさんあった。
ママもパパもあたしにはいつも、たくさん本を買ってくれていた。特にパパは、出張が多い仕事をしていたから、おみやげはいつも本だった。妹へのお土産よりもずっと素敵だったし、ときには選ぶのに迷ったからと、何冊も買ってきてくれたりしていた。だけど――あたしはいつも、妹がうらやましくって仕方がなかった――
外で遊びたかった――男の子たちとどろんこになって遊んでみたかった。
ある日、パパは連休を利用して親戚のおじさんの家に泊まりに行った。
あたしは泣いた――
パパが大好きだったから――大好きなパパが、あたしじゃなく妹を連れていったことに泣いた。仕方ないのはわかっていたけど。あたしは病気がちで、外泊なんて無理だってわかっていたけど――悲しかった。
あたしは、ママと二人で留守番だった。ママはいつもどおりに、つまり――パパがいないときのいつものどおりに――あたしの知らない男を家に連れてきていた。いつもどおりに、あたしにその男が帰るまで部屋から出てくるなと言って、寝室に入っていった。それでまた、あたしは泣いた。
ママがなにをしているのかは、わからなかった。まだそんなことを知る歳じゃなかった。でも、あたしは子供部屋に閉じ込められてる気分だったし、ママがあたしの大好きなパパを裏切っているんだということくらいはわかっていたから――だから泣いた。
三日間――知らない男は、パパがいない三日間、毎日来て毎日ママと寝室に入っていった。
四日目にパパと妹が帰ってきた。パパを出迎えに玄関まで走っていったあたしが見たのは、パパに文句を言って怒っている妹の姿だった。
理由は単純だった――帰り道の途中、お昼ご飯をレストランで食べようと約束していたのに、妹が車のなかで寝てしまったから、パパはそのまままっすぐ家に帰ってきてしまったのだ。家に到着して、寝ているところを起こされた妹は、楽しみにしていたレストランに寄れなくって、カンカンに怒っていた。駄々っ子のそれらしく、パパのお腹をガンガン叩いて、わめき散らしていた。
あたしは妹が憎くて憎くて仕方がなかった――
なんで? なんでそんなことで怒っているの? 幼稚園児じゃあるまいし、寝いていたあんたが悪いんじゃないの! あたしはずっと家にいて、部屋に閉じ込められていて、パパを裏切っているママを見ていて――あんたは、あたしの大好きなパパを独り占めにできただけでも、神様に感謝するべきなのに――なんで? なんでそんなどうでもいいことで――あたしのパパに怒っているの! なんでよ!!
あたしは、そんなことを口に出すことはできず、ただただ泣いた。パパがあたしを見て、微笑んでくれた。
〝しのぶ、おいで。おみやげだよ〟って言って、白とピンクの大きな包みを見せてくれた。
パパは妹をママに預けて、あたしを抱きしめてくれた。泣いているあたしの耳もとで〝しのぶは白が似合うと思ってね。真っ白な洋服を買ってきたよ〟って言った。
〝おまえはいつまでもずっと、真っ白なままでいるんだよ〟そう言って、あたしの涙を拭いて、抱っこしてリビングに連れていってくれた。
パパが持っていた白とピンクの大きな包みには、真っ白なワンピースが入っていた。本じゃなかった。あたしはパパを抱きしめて、何度もお礼を言った。〝パパ、ありがとう。パパ、大好きだよ〟って、何度も、何度も――
だけど――
その日の晩、あたしはパパとママが抱き合っているのを見てしまった――
パパもママも裸だった。パパはあたしに見せた優しい笑顔なんか微塵も見せずに、荒い息でママの上に覆い被さっていた。ベッドが大きく揺れていて、ママの足は大きく開かれていた。女の子は絶対に誰にも見せちゃいけないって、大事にしなきゃいけないって教えられていた〝アソコ〟にパパの体がくっついて揺れていた。
パパの目はギラギラしていて、とっても怖かった。見たこともない笑みを浮かべて、口もとがだらしなく緩んでいた。聞いたこともない汚い言葉でママをなじっていた。ベッドがいままで以上に、大きく細かく速く揺れて、パパは〝いくぞ〟って叫んで、ママは〝なかはやめてよ〟って叫んで、それでパパはママから離れた――
見てはいけない〝モノ〟を見てしまったってすぐにわかった――パパのお腹の下に恐ろしい〝モノ〟がくっついていた。その恐ろしい〝モノ〟の先から、なにかが飛びだして、ママのお腹にくっついた。
あたしは怖くなって、子供部屋に戻った。二段ベッドの上で寝ている妹に気がつかれないように、静かにゆっくりベッドに入って、毛布をかぶって震えて泣いた。
次の日は気分が悪くて学校を休んだ。苦い薬は飲んだふりをして捨てた。ずっとベッドのなかにいて、パパのお腹の下にくっついていた、恐ろしい〝モノ〟を忘れようと、必死に頭を振っていた。
でもだめだった――
トイレに行ったときに、ママが知らない男を連れて寝室に入っていくのを見てしまった。
寝室のドアを恐る恐る少しだけ開けてしまった――
知らない男のお腹の下に、パパのお腹の下にあったのと同じ〝モノ〟があった。ママがその恐ろしい〝モノ〟を舐めていた。どんなにおいしくて甘いフルーツを食べているときよりも、ずっとおいしそうな顔をしていた。
知らない男は昨日のパパと同じことを言った――〝いくぞ〟って。
パパと同じで、その恐ろしい〝モノ〟の先からなにかが飛びだして、ママの顔にかかった――
すごく怖かった。すごく怖かったのに――ママはとっても嬉しそうな顔をしていた。
それに――すごく怖くて、すごく悲しかったのに――あたしの体の真ん中はゾクゾクして熱くなっていた――
自分がおかしくなってしまったんだと、怖くなって、ベッドにもぐって泣いた。泣いても泣いても、恐ろしい〝モノ〟があたしの頭のなかでググッと動いて、なんだかわからない白い液体を飛ばしていた――
あたしはいつの間にか寝てしまっていて、気がついたら夜中だった。二段ベッドの上で、妹が泣いていた。パパとママが怒鳴りあっているのが聞こえていた――
次の日、子供部屋のドアをノックする音が聞こえて目が覚めた。パパの声が聞こえた。
〝しのぶ、入るよ〟
あたしはベッドから出た。パパが部屋に入ってきた。妹は子供部屋にはいなかった。
パパは、あたしが見た恐ろしいパパじゃなくって、いつもどおりの優しいパパだった。
パパはあたしの肩に手をあてて〝このまえ買ってきたワンピースを着てくれないか〟って言った。
あたしはパパが買ってくれた真っ白なワンピースに着替えた。パパが寝起きでボサボサのあたしの髪をとかしてくれた。大きな手であたしの髪を撫でて言ってくれた。
〝おまえの髪はとっても綺麗だね〟
あたしはパパがいつもどおりのパパだったことで、踊りたくなるほど嬉しかった。真っ白なワンピースの、フリルの裾をふわりとさせるために、その場でクルリとまわってみせた。大好きなパパに、とびっきりの笑顔をみせてから、フリルの裾をちょこんと摘んで、お辞儀した。
パパは持っていた仕事用のバッグから、大きなポラロイドカメラを出した。
〝写真を撮ってもいいかな? お姫様〟
あたしはまた、とびっきりの笑顔で微笑んでみせた。パパはシャッターを二回押した。出てきた二枚の写真のうち、一枚をあたしに渡してくれた。
〝この写真を大事にするんだよ〟
パパはそう言って、あたしの頬にキスをしてくれた。
〝いつか、おまえが大人になって、パパ好みの美しいレディになったら、そのときにまた真っ白な服を買ってあげよう〟
パパはそう言って、あたしをきつく抱きしめてから、立ちあがって子供部屋から出ていった。
あたしはパパのあとを追って玄関までついていった。玄関には大きなスーツケースがあって、パパはそれを持って玄関のドアを開けた。
〝出張なんだ。おみやげを買ってくるから、いい子にしているんだよ〟
パパはそう言って、あたしに手を振って出ていった。
あたしは泣いた――
だって、パパがもう帰ってこないんだってわかってしまったから――
あたしはパパが撮ってくれた写真をいまでも大事に持っている。
色あせて真っ白なワンピースがセピア色になってしまった写真を――
「これが子供のときのおまえか」
「そうよ、なんか文句ある? 素直にかわいいって言いなさいよ」
「ああ、かわいいぜ。いまよりはるかに、とびっきりの美しい笑顔をしているぜ」
「そっか。そういうことなのね」
わかっちゃったわ――
「なにがだ?」
「だからパパは、いつまで経ってもあたしに会いに来ないのね……」
パパ好みの美しいレディになっていないから――
あのときよりも、もっともっと素敵な笑顔ができないから――
「なんだって?」
「なんでもないわよ。仕方ないからあんたで我慢してあげるってことよ。あんたのその、チンケなカシューナッツで我慢するわってことよ」
「意味がわからん。まったくもって、やれやれだな」
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